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分野の異なる研究者やクリエーターなど専門家による関東大震災映像の読み解きを通して、新たな発見と学びを得るためのガイドとなるコラムをお届けします。
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「関東大震災映像×専門知」によるコラム一覧

  • 社会教育映画としての『關東大震大火實況』

    森田のり子(映像文化史研究者)

    文部省による長篇記録映画『關東大震大火實況』は、前半こそ被害状況や救助・避難の様子が描かれているものの、後半はもっぱら復興に向け各所で努力する人々の姿にカメラが向けられています。ドキュメンタリー映画の研究者である森田のり子さんは、その背後に文部省による社会教育政策の推進があることを裏付け、画面に写っていることとともに、そこから排除されている事実にも目を向けることを読者に呼びかけます。

    2023/03/03 公開
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  • 映像に残った被災地、横浜ー『関東大震災』[伊奈精一版]の分析を中心に―

    吉田律人(横浜都市発展記念館調査研究員)

    関東大震災は震源となった南関東一帯に大きな被害をもたらしましたが、とりわけ横浜市街地は激しい揺れと火災により甚大な被害を被りました。横浜の被災状況を撮った写真群を資料に、綿密な調査研究と活発な展示活動、論文発表を続けている吉田律人さんによる本稿では、『関東大震災』[伊奈精一版]の横浜に関するパートの詳細な分析を通し、文字資料と非文字資料双方を活かした複合的なアプローチを試みます。
    (左図は、前川写真館旧蔵のガラス乾板[前川謙三撮影]横浜市史資料室所蔵)

    2022/11/02 公開
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  • フィルムに残る、記録者たちの背中を追いかけながら

    小森はるか(映像作家)

    2011年に起きた東日本大震災は多くのアーティストに、生死のリスクを前に生きる人々にとって芸術の意味を問うきっかけを与えてきましたが、本稿では、アーティストの瀬尾夏美さんとともに被災地に移住し、罹災者の生きる場の記録を作品として発表し続けている小森はるかさんが、関東大震災による惨状を眼前にして撮影を続けたキャメラマンの苦悩や覚悟を咀嚼しながら、記録者として撮り続けることへの思いを語ります。

    2022/11/02 公開
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  • 一瞬のバラックを求めて

    中川武(博物館明治村館長)

    本サイトで紹介している映画には、震災発生直後から建設が始まったバラックなど、仮の宿で暮らす人々が過酷な現実を前にした一瞬の生の姿が、記録に留められています。東南アジアの歴史的建造物の現状を目の当たりにし、東日本大震災の被災地を目撃してきた中川武さんが、関東大震災の記録映画から受けた違和感を出発点に、二重の一過性を体現する避難民の姿から、復興を支える人間の活力に目を向けていきます。
    (左図は工学院大学図書館所蔵)

    2022/07/01 公開
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  • 写真と映像にみる関東大震災

    沼田清(写真編集者)

    関東大震災は、新聞に掲載された写真や写真帖、絵葉書など、視覚を通して多くの国民が被災体験を共有する画期的な機会になりましたが、膨大な報道写真の掘り起こしを行ってきた沼田清さんは、そこに意図的な改竄や捏造があることを指摘しました。本稿では、映画作品にみられる映像固有の描写の発見を通して、映画と写真という異なる視覚資料が補いあうことで震災研究が深化していく可能性を展望します。

    2022/07/01 公開
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  • 関東大震災記録映像の撮影場所―浅草十二階を手がかりに―

    細馬宏通(早稲田大学文学学術院)

    映画会社・日活のカメラマンが被災後すぐに撮影に向かったのが浅草凌雲閣(十二階)であったように、十二階は震災の記憶においても象徴的な存在でした。近代における視覚の在り方から十二階を論じた細馬宏通さんが、絵葉書などには表われない視角から捉えた塔の姿を公開映像のなかに発見し、その撮影場所を探偵よろしく突き止めていきます。
    (左図は著者蔵)

    2022/03/31 公開
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  • 100年前の資料を通して感じる関東大震災

    室谷智子(国立科学博物館)

    関東大震災は、行政府など各所で膨大な記録文書が残されるとともに、映画や写真、絵画などの多くの視覚資料が生まれることとなった近代ならでは「出来事」でした。地震学の専門家であるとともに、国立科学博物館で東日本大震災に関する展示を担当した室谷智子さんが、写真や油絵から保存された被災建築物まで、奥深い非文字資料の世界を解説します。
    (左図は国立科学博物館所蔵)

    2022/03/31 公開
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